Dynamometer Endmill
Holder
M/C table X
Y Z
Workpiece 1 Workpiece 2
難削 性金 属 材料 の切 削加 工技 術 の高 度化 に関 する 研 究( 第 3 報)
― コ ー テ ッ ド 超 硬 エ ン ド ミ ル に よ る 難 削 材 の 効 率 的 切 削 加 工 技 術 の 開 発 ―大 塚 裕 俊 ・ 水 江 宏 ・ 橋 口 智 和 機 械 ・ 金 属 担 当
Study on end milling difficult-to-machine alloys(the 3rd report)
-High efficient machining with coated carbide endmills -Hirotoshi OHTSUKA・ Hiroshi MIZUE・ Tomokazu HASHIGUCHI Mechanics and Materials Engineering Group
要 旨
難 削 性 金 属 材 料 の 切 削 加 工 技 術 の 高 度 化 の た め , 前 年 度 の エ ン ド ミ ル の 切 れ 刃 形 状 を 改 良 し た 不 等 リ
ー ド エ ン ド ミ ル を 用 い て , ス テ ン レ ス 鋼 (SUS304)の 切 削 加 工 実 験 を 行 っ た 結 果 , 等 リ ー ド エ ン ド ミ ル に
比 較 し て 不 等 リ ー ド エ ン ド ミ ル で は 切 削 抵 抗 の 変 動 が 小 さ く 切 削 距 離 が 伸 び る 結 果 が 示 さ れ た . ま た ,
よ り 加 工 条 件 の 厳 し い ポ ケ ッ ト 形 状 を 対 象 と し た 切 削 加 工 実 験 を 行 っ た 結 果 , 不 等 リ ー ド エ ン ド ミ ル の
方 が ス テ ン レ ス 鋼 ( SUS304) で は 工 具 寿 命 が 大 幅 に 増 大 し た .
1. はじめに
ステンレス鋼など難削材は,エンドミル加工におけ
る被削性の向上が常に求められている.今回は,ステン
レス鋼を対象として,前年度に開発されたコーテッド超
硬エンドミル工具をさらに改良した不等リードエンドミ
ルを加工実験に適用する.また加工形状として,直線切
削に加え加工条件の厳しいポケット形状の切削加工も実
施する.
本研究では,被削材の加工効率向上の手段として,
一刃ごとにねじれ角を変化させた不等リードエンドミル
を適用する.昨年度の知見により切れ刃形状を改良した
本工具を用いて比較試験を行い,工具寿命向上について
の有効性を示す.また製品加工で頻出する凹部形状(ポ
ケット形状)について,等リードエンドミルとの比較実
験を行い有効性を検証する.
2. 実験装置と方法
2.1 切削工具と被削材
工具として,ねじれ角が交互に 30°と 32°である直
径 8mm,4 枚刃の(Ti, Al)N コーティングされた超硬ス
トレートエンドミル(不等リードエンドミル:Fig.2)
を用いる((株)信栄製作所で製作:以下エンドミル
(A)).これは今回開発された工具である.その比較対
照用として,前回利用した超硬ストレートエンドミル
(ねじれ角がすべて 30°)を用いる((株)信栄製作
所で製作:以下エンドミル(B)).なお工具母材は超微
粒子超硬合金であり,従来よりも硬度や耐酸化性が向上
した被膜を用いている.
さ ら に ポ ケ ッ ト 形 状 加 工 で は , ね じ れ 角 が 交 互 に
36°と 39°である直径 8mm,4 枚刃の(Ti, Al)N コーテ
ィングされた超硬ストレートエンドミル(不等リードエ
ンドミル)を用いる(市販品:以下エンドミル(C)).
この比較対照用として,材質がほぼ同等の超硬ストレー
トエンドミル(ねじれ角がすべて 45°)を利用する
(市販品:以下エンドミル(D)).
なお被削材はステンレス鋼 SUS304 を用いる.
2.2 実験装置と手順
Fig.1 に用いる実験装置の概略を示す.上記の材料か
ら作製した被削材 1,2 を立形マシニングセンタ(MC)の
テーブル上に取り付ける.被削材 1 は工具寿命試験(直
線切削およびポケット形状切削)に用いられ,被削材 2
は 3 成分工具動力計上に保持され切削抵抗の測定に用い
られる.切削抵抗の測定は Table 1 右の Rd,Adに示さ
れるように,被削材についてエンドミルの軸方向と径方
向に一定の切込み量を与えて XY 平面内での直線端面切
削により行う.工具寿命試験の標準切削条件も Table 1
左に示す.切れ刃や切りくずの外観についても適宜に観
察する.
Fig.1 Setup for experiment
Table 1 Cutting conditions for experiments
Experiment
Cutting conditions
Tool wear experiment (Straight&Concave)
Cutting force measurement
Cutting speed V m/min (Spindlespeed) S min-1
75 3000
75 3000
Feed per tooth fz mm/tooth
0.03, 0.01* (0.08*mm/cycle
Z direction : radius=1*mm)
0.03
Cutting direction Down cut Down cut
Free length of tool mm 32 32
Tool runout ≦ 6μm ≦ 6μm
Radial depth of cut Rd mm
0.4 (standard) 0.4
Axial depth of cut Ad mm
8 8
Workpiece SUS304(Straight &C
oncave cutting)
SUS304 (Straight
cutting)
Coolant Dry air Dry air
* Cutting conditions for initial helical milling for concave cutting
Table 2 Coated carbide endmills (φ8mm, 4 flutes) used for experiments
Manufacturer
Cutting edge
SHIN-EI
SEISAKUSHO Co., Ltd. (developed
endmill)
OSG
CORPORATION (commercial
product)
Unequal helix angle Endmill(A) 30°, 32° Endmill(C) 36°, 39°
Equal helix angle Endmill(B)
30°
Endmill(D) 45°
Fig.2 Unequal helix angle endmill (Endmill(A))
2.3 実験条件
工具寿命試験(直線切削ないしポケット形状切削)
に用いる切削条件を Table 1 左に示す.直線切削は直線
端面切削の繰り返しにより行うが,ある切削距離ごとに
切削抵抗の測定と切れ刃や切りくずの観察を行う.以上
について開発エンドミル(A)(B)について比較実験を行う.
これに対しポケット形状加工では,*印で示す条件によ
る切削開始時のヘリカル穴加工が必要である.Fig.3 に
ポケット形状加工に用いられる工具パスとその加工状況
を示す.加工順序はまず被削材の中心において深さ 8mm
まで工具をらせん状に振り下ろし,ついで Fig.3 に示す
工具パスと Table 1 左に示す条件で工具を外側にスパイ
ラル状に広げていくことで行う.さらに連続してポケッ
ト形状の加工を行い,定数個の加工終了ごとに切削抵抗
の測定と切れ刃や切りくずの観察を行う.以上を市販エ
ンドミル(C)(D)について行う.Table 2 にエンドミル
(A)~(D)のねじれ角と工具メーカを示す.
Fig.3 Tool paths and milled workpiece used for tool wear experiment (Dimensions of the shape 40× 40×8mm)
3. 実験結果と考察
3.1 直線切削加工
ステンレス鋼 SUS304 は鋼材として広く利用されてい
る.本研究では開発されたエンドミル(A)(B)を用いて直
線切削加工を行い,工具寿命等について比較評価を行っ
た.
不等リードエンドミル(A)の結果については,Fig.4
に見られるように,切削距離の増大とともに工具摩耗が
次第に進展し,切削距離 25m で工具寿命となった.工具
摩耗の特徴は,切れ刃先端形状が逃げ面とすくい面を含
めて面取り状に鈍化していくようにチッピングが起こり
摩耗が進行していく点である.そして切削距離とともに,
切れ刃全面にわたって工具摩耗やチッピングが大きくな
った.そして刃先が赤熱して切れ刃全面への被削材の溶
着が発生し,工具寿命を迎えた.
Fig.4 Photographs of cutting edge (Endmill(A) Workpiece: SUS304)
(a) Side edge (b) Bottom edge (a) ↓
←(b)
100°
30°
32°
19
また切削抵抗の測定値については,切削距離ととも
に被削材に対する法線方向成分 Fx が他成分と比べて切
削距離とともにゆるやかに増大したが,工具寿命に近づ
くにつれ急激に増大していった(Fig.6).切りくず形
状については,新品工具時は光沢のある細い短冊形状を
呈するが,切削距離の増大とともに,徐々に表面のせん
断による横筋が大きくなっていき,端面にギザギザが発
生していった.さらに切削距離 20m を過ぎると切りくず
が大きく千切れるようになり,工具寿命時には切りくず
の細かい破断やむしれが増大した.切りくずの色も銀色
からやや鈍い色に変化した(Fig.5).
以上の結果と比較のため,等リードエンドミル(B)
について同じ条件で実験した際の切削抵抗の測定値(法
線方向成分 Fx)の変化を Fig.6 中の○印で示す.これ
によれば,不等リードエンドミル(A)に比べて Fx は切削
開始からやや直線的に増大している.また不等リードエ
ンドミル(A)の切削距離がエンドミル(B) よりも 25%以
上伸びていることがわかる.
Fig.5 Photographs of chip (Endmill(A) Workpiece: SUS304)
Fig.6 Relation between cutting length and cutting force (Endmill(A) Workpiece: SUS304)
Fig.7 は切削抵抗の変動の大きさを評価する指標とし
て,切削抵抗成分 Fx の分散σ2の変化を示したものであ
る.これによれば,不等リードエンドミル(A)の方が工
具寿命時まで低い値で推移していることがわかる.
Fig.7 Relation between cutting length and cutting force (Endmill(A) Workpiece: SUS304)
3.2 ポケット形状切削加工
続い て, エン ド ミル(C)(D) を用 いて ステ ン レス 鋼
SUS304 のポケット形状加工を行い,工具寿命等につい
て比較評価を行った.
不等リードエンドミル(C)の結果については,まず切
れ刃の変化では,Fig.8 に見られるように,切削個数の
増大とともに工具摩耗が次第に進展し,切削個数 60 で
工具寿命となった.
Fig.8 Photographs of cutting edge (Unequal helix Angle Endmill(C) Workpiece: SUS304)
工具摩耗の特徴は,前節と同様に切れ刃先端形状が
逃げ面とすくい面を含めて面取り状に鈍化していくよう
にチッピングが起こり摩耗が進行していく点である.そ
して切削個数増大とともに,切れ刃全体において工具摩
耗やチッピングが大きくなり,刃先が赤熱して切れ刃へ
の被削材の溶着が発生し工具寿命を迎えた.ヘリカル穴
加工によりエンドミル底刃も損傷するが,Fig.9 に示す
ように底刃外周部から摩耗や欠けが切削個数とともに成
長している.
切削抵抗の測定値については,切削個数とともに被
削材に対する法線方向成分 Fx がゆるやかに増大してい
き , 工 具 寿 命 が 近 づ く と そ の 増 加 率 が 大 き く な っ た
(Fig.11).
切りくず形状については,当初は銀色の短冊状切り
くずであるが,切削個数 30 を過ぎて切りくずの千切れ
が多くなった.また徐々に表面のせん断による横筋が大
きくなりそこから破断するものが増えていった.工具寿
命時にはほとんど切片状に断裂した切りくずとなり,切
りくずの色も銀色からやや鈍い色に変化した(Fig.10).
Fig.9 Photographs of cutting edge (Unequal helix Angle Endmill(C) Workpiece: SUS304)
Fig.10 Photographs of chip (Unequal helix Angle Endmill(C) Workpiece: SUS304)
Fig.11 Relation between cutting length and cutting force (Unequal helix Angle Endmill(B) Workpiece: SUS304)
以上の結果と比較のため,等リードエンドミル(D)に
ついて同じ条件で実験した際の切削抵抗の測定値(法線
方向成分 Fx)の変化を Fig.11 中の○印で示す.
これによれば不等リードエンドミル(C)の切削距離が
等リードエンドミル(D)よりも 4 倍程度大きく伸びてい
ることがわかる.また双方とも特徴的な切削抵抗の増加
傾向を示すことがわかる.また前節と同様,その切削抵
抗の変動値についても等リードエンドミル(D) よりも工
具寿命時まで低い値で推移していた.
4. おわりに
開発された不等リードエンドミル等を用いて,切削
加工実験(直線切削およびポケット形状切削)によるス
テンレス鋼 SUS304 の適切な加工条件の研究を行い,次
の結果を得た.
(1) 開発された不等リードエンドミルによる SUS304 の
直線切削では,標準切削条件において切削距離 25m
となり,比較したエンドミルの切削距離 20m に対し
て 25%以上工具寿命が延びた.
(2) 市販の不等リードエンドミルによる SUS304 のポケ
ット形状切削では,標準切削条件において切削個数
60 となり,比較したエンドミルの切削個数 15 に対
して工具寿命が 4 倍程度延びた.
(3) SUS304 の直線切削およびポケット形状切削では,
いずれも切れ刃先端が面取り状に鈍化していく摩耗
形態を示した.切削抵抗の被削材に対する法線方向
成分 Fx が,工具寿命が近づくに従い増加率が大き
くなった.
追 記
本研究は,平成 24 年度の九州各県工業系公設試連携
研究の一環として実施されました.
0
30
45
60
1mm
21